設計GLより80㎝高い施工が監理ミスだとして5000万円請求された事件【0729 T建築士事件】
相談内容(事案の概要)
依頼者(建築士)は、傾斜地での店舗新築の設計・監理を業務報酬240万円で受託。
ところが、工事を代金8900万円で請け負った施工業者が、設計図書で指定していた地盤高さ(設計GL)より80㎝高く、建物を建築。
工事完成後、施主が「前面道路から建物・駐車場へのアプローチが急勾配で危険なので、建て替える必要がある」と主張し、施工業者と依頼者に対し、建替費用内金5000万円の損害賠償請求訴訟を提起。
弁護士としての対応
以下の点を中心に反論を展開した。
- もともと敷地が傾斜地であり、設計どおり施工してもアプローチに一定の勾配は不可避だった。
- 施主は「多くの建築経験があり、自分で工事をチェックできる。監理は検査の立会程度でよいから、報酬をできるだけ安くしてほしい」と要望し、当初に内諾していた報酬額を大幅に減額して契約した経緯があるから、監理義務の範囲は限定的である。
- 施主は、依頼者に無断で、施工業者と相談して多数の設計変更をした経緯があり、設計GLの変更も意図的な設計変更と見られる。
- 施主は、既に施工業者との間でペナルティとして工事代金を900万円減額する合意をしており、本件は解決済みである。
- 仮に、損害賠償義務を負うとしても、低廉な対策方法がある。
解決内容
裁判所から、双方に、解決金支払による和解勧告があった。
当方は、①本件の事実経過、②契約代金比率などを踏まえ、施工業者と依頼者の負担割合に90:10以上の差をつけるべきと主張。
結局、依頼者は10万円を支払い、一切の責任を免除される(包括的清算)という和解が成立。
ー京都地裁 平成28年6月23日 和解成立