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設計ミスによる敗訴判決を高裁で逆転勝訴した事件【0286 M建築士事件】

相談内容(事案の概要)

施主(兼 施工業者)が、自動火災報知設備(以下「自火報」)が法的に要求されない賃貸マンション(延面積499㎡)の建築を計画し、依頼者(建築士)に構造設計のみを依頼。

依頼者が1階の鉄骨寸法を誤った構造設計図(基本設計図で5540㎜とされていたのに、5575㎜とした構造図)を作成したため、完成建物の延面積が501㎡になり、自火報が必要になったとして、その設置費用1000万円の損害賠償請求訴訟を起こされた。

一審で全面敗訴した被告からの依頼を受け、控訴審から受任。

弁護士としての対応

地裁判決の判断は、以下の認定に基づく。
A) 構造設計上のミス(債務不履行)
↓ C) 因果関係α の存在
B) 延べ面積が500㎡以上に増加
↓ E) 因果関係β の存在
D) 自火報の設置費用の損害発生

そこで控訴審では、A~Eについて以下の主張・立証を展開した。

A) 構造設計にミス(債務不履行)はないこと
① 依頼者に交付された基本設計図(これ自体は現存しない)に5575㎜の記載があった事実を、消防署提出の使用開始届添付図書を取り寄せて証明。
② 建築確認申請図書が5540㎜の図面に差し替えられた事実を、建築計画概要書の配置図・1階平面図が5575㎜→5540㎜と訂正されていることで証明。

B) 本件建物の延面積は500㎡未満であること
① 消防当局に問い合わせ、「確認申請図書の延面積で判断し、本件建物につき床面積実測による指導の予定はない」との説明を得た。
② 本件建物を現に実測し、外壁が35㎜屋内側にずれて施工されている(床面積が減少する)事実を証明。

C) 因果関係αがないこと
① 塔屋が構造図に従って施工されていれば、延面積は500㎡未満になることを指摘。
② ベランダ手摺が設計より高く施工されており(ベランダ面積が床面積に算入)、500㎡以上になるため、消防当局が手摺高さの是正を指導していた事実を証明。

D) 自火報の設置を要しないこと(損害の不発生)
① 本件建物1階は店舗利用されているから、消防法上の義務は発生しない。
② ベランダを是正すれば、消防当局から自火報の設置を要求される可能性はない。
③ にもかかわらず、施主はベランダ是正もしておらず、施主には自火報を設置する意思がない。

E) 因果関係βがないこと
① 延面積を500㎡未満にする方法は多数あるから、自火報設置は必然の損害ではない(施主は「安全性軽視の姑息な方法」と批判するが、延面積499㎡で自火報設置を免れようとする計画こそ「安全性軽視の姑息な方法」である)。
② 自火報設置費用は延面積増加による拡大損害であり、予想不可能な特別損害であるから、相当因果関係がない。

解決内容

請求棄却の全面勝訴判決。
ー大阪高裁 平成15年2月12日 判決

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