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【4号建物問題 Part 1】基礎知識

私が近年、特に力を入れて取り組んでいる「4号建物」の問題について、簡単にご説明してみたいと思います。

1 4号建物とは何か

4号建物とは、建築基準法6条1項4号及び20条1項4号(両者は概ね重なる)に定められた建物のことで、ざっくり言うと、①木造の2階建もしくは平家建、または、②鉄筋コンクリート造もしくは鉄骨造の平家建、の小規模な建物です。戸建住宅の多くが4号建物に当たります。

4号建物は、建築基準法等で特別扱いがされています。

2 4号建物に対する特例

(1) 前提~建築基準法令の規定の種類

建築基準法令の規定には、技術的な基準を定めた「実体規定」と、建築確認等の手続を定めた「手続規定」があります。また、実体規定には、基準の定め方によって、求められる「性能」を定めた「性能規定」と、建材等の「仕様」を定めた「仕様規定」という2種類があります。

4号建物は、実体規定と手続規定の両方で特別扱いされています。

(2) 実体面での特例

本来、すべての建物は構造計算が義務付けられていますが、建築基準法20条1項4号の建物だけは、構造計算をせずともよく仕様規定しか適用されない、という特別なルート(仕様規定ルート)が用意されています。

しかも、その仕様規定の内容が大問題で、特に木造の仕様規定は極めて不十分です。

まず、①定められている水準が不十分なものとして、例えば、必要な耐力壁の分量が施行令46条4項で定められていますが、構造計算をすると、その1.5倍以上の壁量が必要になります。

また、②定められている形式が不適切なものとして、床等の水平面の剛性に関する規定が施行令46条3項にありますが、床面積等を一切問わず火打梁だけでよいかのようにも見えます(耐力壁のように倍率で規定されていません)。

さらに、③規定自体がない項目として、梁の断面、柱・壁の直下率、ゾーニング検討等については、まったく規定が置かれていません。

このように、仕様規定は、必要最低限の基準を定めているだけにすぎず、それらを満たしたからといって必ずしも安全な建物になるとは限らないのです(必要条件であって、十分条件ではない)。

(3) 手続面での特例

本来、すべての建物は、設計段階の建築確認審査や施工段階の中間検査・完了検査において、耐震性など構造安全性に関する審査・検査が義務付けられていますが、6条1項4号建物で前述の「仕様規定ルート」を選んだ場合には、この構造審査が省略されています(いわゆる「4号特例」)。

そのため、建築確認申請書に軸組図や伏図等の「構造図面」を添付する必要がありません(ここから「図書省略制度」と呼ばれることもあります)。

(4) 設計図書の保存についての特例

さらに言うと、4号建物以外の全ての建物では、建築士法施行規則により、設計図書の15年間の保存が義務付けられていますが、4号建物だけは昨年まで保存義務すらありませんでした。

そのため、4号建物では、軸組図や伏図といった重要な「構造図面」が建築士によって作成されておらず、製材業者が作るプレカット図面(施工図の一種)しか無い、ということがよく見られます。

3 4号建物の現状

以上のような4号建物をめぐる法制度をまとめたものが、下の図になります。

戸建住宅に最も多いのが4号建物なのに、法令は4号建物を野放しにしており、まさに無法地帯といってよい状態が続いていたため、欠陥住宅被害の温床となっています。

4 私たちの提言

そこで、私達は、日弁連消費者問題対策委員会や欠陥住宅ネットとして、以下のような提言をしています。

(1) 4号建物についても、建築基準法令上で構造計算を義務づけること。

(2) 仮に、構造計算を義務付けせずに仕様規定ルートを残すのであれば、仕様規定を充実化・厳密化し、構造計算をしてもOKが出る水準に高めること。

(3) 4号建物について、建築確認・検査手続における構造審査省略特例を撤廃すること。

日弁連意見書

京都弁護士会意見書

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