国交省 社会資本整備審議会委員に着任しました

4月9日付で国土交通省の社会資本整備審議会(建築分科会 建築基準制度部会)の専門委員に着任しました。
2009年にも同審議会委員を担当していたことがあり、当時は住宅宅地分科会 既存住宅・リフォーム部会でしたが、今回は「今後の建築基準制度のあり方及び今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方」の継続検討課題について議論する分科会です。
今年4月1日に改正建築基準法が施行されて、私が長年取り組んできた「4号建築物の問題」について一定の法改正(4号特例の縮小)が実現しました。
しかし、改正建築物省エネ法の同時施行により建物が重量化・高階高化するため、住宅の安全性の問題はまだまだ予断を許しません。
そのような問題にも積極的に発言してゆきたいと思います。
*********************
4月18日、霞ヶ関の中央合同庁舎で社会資本整備審議会建築分科会の合同会議が開催され、出席しました。
意見交換で、私は次の3点の意見を述べました。
① いわゆる「グレーゾーン」建築物に対する耐震診断・耐震補強の支援を行うべきこと
旧耐震基準の建築物のみならず、新耐震基準以降でも2000年までに建築された建物は、熊本地震や能登半島地震等で明らかに被害が大きい傾向が見られました。
これらは既存不適格でなく、2000年基準(平成10年基準法改正における性能規定化を受け、地盤や基礎、緊結金物、偏心などに関して具体的仕様を例示した平成12年の諸告示の基準。耐震基準との関係では注意規定・確認規定)を充足しない欠陥住宅である可能性が高いと考えられます。
2000年からでも既に20年以上が経過し、設計者・施工業者に対する責任追及はほぼ不可能です。
そこで、このような建築物についても、既存不適格に準じて耐震診断・耐震補強の補助など積極的な支援が必要だと考えられます。
② 防火規制に関する施工についての中間検査を導入すべきこと
現在、戸建住宅の中間検査は、基礎配筋時と建前時(接合金物施工時)に行われるにとどまります。
しかし、防火に関わる施工(例えば外壁防火のための断熱材施工)も、その後に仕上材が施工されれば隠蔽されるため、中間検査を行うべきと考えられます。
③ 旧4号建築物の規制のあり方について更に検討すべきこと
今年4月1日施行の改正建築基準法では「4号建築物」(木造2階建以下等の小規模建築物)というカテゴリーがなくなりました。
しかし、今後増加が予想される新3号建築物(平家建かつ床面積200㎡以下)には、改正前の「4号特例」と同様に構造審査・検査の省略が依然として残されています。
また、新2号建築物となった2階建建築物も延面積300㎡以下であれば、構造審査・検査の省略(従前の4号特例)が無くなったとはいえ、構造計算が義務づけられていません。
本来、構造図面の提出が義務づけられるのに、「仕様表」での代替が認められた結果、構造図面の作成を怠ってプレカット図で代替する危険性が高いと言えます。
そして、省エネ化により建築物が重量化・高階高化するにもかかわらず、仕様規定は壁量と柱の小径の見直しのみにとどまり、水平剛性や梁断面、基礎等の仕様規定が不十分極まりない状況です。
もはや建築基準法は、これを満たせば安全であるという「合格点を定めた法律」でなく、これすら満たさないようであれば問題外であるという「足きり点を定めただけの法律」に変わってしまったと言わざるを得ません。これでは、建築士や施工業者に誤解を与えかねません。
やはり、すべての建築物に構造計算を義務付けて住宅の安全性を実質的に確保すべきだと考えられます。
4号建築物の問題に関するコラム記事はこちら。