建物に求められる「品質」「性能」とは?

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一般的に建物に求められる「品質」「性能」とは何ですか?

住宅等の建物に求められる品質・性能は、大きく言えば、次の3つが挙げられるでしょう。

  • デザイン性
    建物の内外部の見た目の美しさ・美観
  • 機能性・快適性
    建物の平面・立面的なプランや設備設計など建物の機能上の使いやすさ、居住空間としての居心地の良さ等
  • 安全性

中でも、「安全性」は、建物のすべての性能のおおもとになる基本的なものです。

建物の「安全性」とは何ですか?

古くから怖いものを表すのに「地震・雷・火事・おやじ」と言われてきました。
一説に、「おやじ」とは、実は「親父」でなく、台風を意味する「おおやまじ(大山嵐)」が転じたものとも言われています。
いずれにせよ、古来、地震や悪天候、火災が人々の生活を脅かす恐ろしいものであったことは間違いありません。

建物は、このような災害等から人々を守ることができる、「安全な生活の器」でなければなりません。

そこで、建物に求められる「安全性」とは、本来の用法に従って建物を使用している間に、その建物に関わる人達の生命、身体及び財産に損害を与えないことと考えられ、少なくとも、次のような品質・性能が含まれると言えます。

(1) 構造耐力上の安全性能(構造安全性)
長期荷重や短期荷重によって、崩壊したり、著しく損傷・変形したりしないこと。
①長期荷重
建物じたいの重さ(自重)、建物内の人や家財道具等の重さ(積載荷重)といった、建物に常にかかり続ける力
②短期荷重
地震、強風、積雪等の自然現象による力

(2) 火災に対する安全性能(防火性・耐火性)
①耐火性能
建物が急激に燃え落ちず、避難時間が確保できるよう、建材が火災に抵抗すること
②防火性能
周辺の建物との間で延焼しにくい・燃え移りにくいこと。

(3) 耐久性能(耐久性・耐候性)
雨水の浸入・結露の防止など、気候・気象条件に耐え、容易に腐朽・腐食しないこと。

(4) 使用上の安全性・避難上の安全性
建物の使用に当たり、平常時又は地震・火災その他の非常時を問わず、関係者の生命・健康に損害を与えないこと。
①平常時:廊下・階段で滑ったり転倒・転落したりする事故を防止する性能など。
②災害時:消火・救命活動、避難行動に必要な設備があることなど。

(5) 環境衛生上の安全性能(良好な環境衛生条件の確保)
生命・身体の健康に悪影響を与える衛生その他の環境条件から保護し、又は良好な人工的屋内環境を有すること。
例えば、通風・換気等の空気環境や、採光等の光環境など。

なお、最高裁平成19年7月6日判決は、「建物は、そこに居住する者、そこで働く者、そこを訪問する者等の様々な者によって利用されるとともに、当該建物の周辺には他の建物や道路等が存在しているから、建物は、これらの建物利用者や隣人、通行人等の生命,身体又は財産を危険にさらすことがないような安全性を備えていなければならず、このような安全性は、建物としての基本的な安全性というべきである」と明確に述べています。

建築基準法の規定はどんな意味があるのですか?

(1) 以上のような安全性のうち、最低限の基本的な安全性能は、建築基準法令の規定(技術的基準)が定めています。

建築基準法第1条は、「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」として、ナショナル・ミニマムとしての最低基準(必要条件)を定めていることを明らかにしています。

(2) 注意しなければならないのは、このような安全性は、新築時だけでなく、中古建物でも、建物が存在し続ける限り要求される、ということです。

この点、国土交通省住宅局建築指導課が編集した『図解建築法規』は、次のように指摘しています。

「建築基準法の技術的基準の殆どは、建築物を建築する際の設計基準や建設基準としての性格だけでなく、竣功後、使用開始してから、最終的にその建築物の除却若しくは滅失に到るまでの間に守るべき技術的基準としての性格を有している…。この意味で、これらの技術的基準は「状態規定」と称されているが、世間一般の技術者でこの点についての認識が欠けている者が多い。」

雨漏りの防止を定めた法律はないのですか?

確かに、雨漏り(雨水の浸入)の防止については、建築基準法令に条文が存在しません。
しかし、「雨露をしのぐ」ことは、建物にとって、あまりにも基本的な性能であって、その意味で建築基準法以前の問題であるとさえ言えます。

民法の解釈では、建物が「不動産」(民法86条)となるためには、「完成する必要はなく、屋根と周壁ができて、独立に風雨をしのげればよい」とされています。
つまり、風雨をしのげないものは建物ですらないのです。

ちなみに、住宅品質確保促進法は、新築住宅の「雨水の浸入を防止する部分の瑕疵」について、「構造耐力上主要な部分の瑕疵」と同じく、10年間の担保責任を強制しています(特定住宅瑕疵担保履行確保法は、そのために瑕疵保険の加入等まで施工業者に義務付けています)。

このように、建物にとって、雨漏り防止という性能は、耐震性に勝るとも劣らない大切な性能なのです。